1977年、クートラスは印刷所勤務の友人から未使用のポスターを数百枚もらい受けた。グァッシュを本格的に描き始めたのがこの年からであり、このポスター入手が制作のきっかけであろう。いくつかのグァッシュ作品の裏面にポスター図柄が残っている。
主要なモチーフである肖像画には正面向きと横顔がある。横顔はほぼ左側を向いている。どちらにも特徴的なのはその目である。正面はビザンティン風の宗教画を想起させるし、横顔は「鳥」の目を思わせる。横向きにもかかわらず、鑑賞者を見つめているようだ。
クートラスは一連のグァッシュ肖像画を「僕のご先祖さま」と呼んでいたという。岸真理子・モリアによれば、先祖は自分に連なる過去の人間ではなく、自分をつくっている大勢の人たちであり、そこには動物たちも含まれていた。