2020.06.14

Drawing

 

「街路がアトリエ」と言われたクートラスは、公園やカフェ、メトロの座席で見知らぬ人々をデッサンした。デッサンは人物にとどまらず、鳥や犬、ネズミたちもモデルとなっている。対象への愛と好奇心に促されたドローイングの筆致は、息遣いが感じられ、どこまでも伸びやかである。
クートラスは子供の頃から、古い壁に刻まれた文字や、絵を付けた古いラヴレター、冠婚葬祭の折に村人が贈りあった古いカード等に惹かれたという。クートラスの図解入りのメモには「文字のデッサンをするときは自分で腕を支えず指先を自由に遊ばせてペンを持つ」とあり、スケジュールノートを埋めた画と文字は、それ自体が作品のようだ。
またカルトのための下書きも残されており、モチーフの展開や構成を画家自身が楽しんでいた様子が読み取れる。