2020.05.15

Carte

 

1967年、クートラスは亡くなるまで住むことになった、パリのヴォージラール通りに転居する。その頃から、貧窮が昂じてキャンバスや画材の購入もままならなくなり、拾い集めてきたボール紙等を120×60mmくらいのタロットカード大に切って作品を制作するようになった。
ボール紙に数回にわたって膠を薄塗りし、乾かして磨き、そこから削る、あるいは鉄アイロンで熱を加える等の破壊的とも言える作業を加えた後、しばらく寝かせておき、再び取り上げて作品を仕上げられたカルトは、どこか16世紀の板絵のような印象を与える。
このようにして1枚、1枚のカルトをワインのように「熟成」させた後で、6枚、9枚、12枚、15枚、20枚、24枚組などのコンポジションを台紙に貼り込み、クートラス自身で額装することもあった。コンポジションに微妙な揺らめきの効果を与えるために、あえてカルトの大きさを単一のサイズにしていない。後に自ら「僕の夜」と名付けたカルトの枚数はクートラス自身の言葉によれば6,000枚を超えていたようである。